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★裏方に訊く 2010年2月 【全3回 其の1】
藝能を支援する町、となると真っ先に思いつくのが浅草。沢山の藝能が生まれた町となると新宿などがあるだろう。他にもそういった色合いの町は、原宿、渋谷、下北沢などがあり、最近行政が藝能に力を入れている町となると、三軒茶屋、池袋、高円寺などが劇場を持って活動を活発化させている。 しかし、地域に文化と称される冠がつく場所となると、東京のど真ん中を走る中央線界隈の中野〜立川辺りだけではなかろうか。総じて中央線文化と呼ばれたりする。 音楽に置いてはフォークソングの時代からミュージシャンが住む地域として名高いし、今も“中央線ロッカー”という形容詞がつくくらいバンドマン達がかっ歩する地域である。とにかくロック、ブルース、ジャズ系の小さなライブハウスが数多い。 そもそもこの辺りにそういう藝能文化が根付いたきっかけは、昭和初期に文化人や作家が多く住み着き、グループを作って活動をしていたという事がきっかけになったらしい。 藝能以外の文化でも特異なものがある。ファッションはアジア・エスニック系が多かったり、それを反映してかスピリチュアル的なショップも多い。 この地域のある杉並区というのもかなり特長がある区である。「阿佐ヶ谷ジャズストリート」というイベントは区のジャズ好きの職員とライブハウスの有志が始めたものだったり、区立の劇場として「座・高円寺」を開館させたり、若手落語家支援の「若手あとおし落語会」、今年7回目を迎える「杉並演劇祭」なんてのも開催されている。なかなか藝能に対して積極的な支援をしている。 ●杉並区文化協会 さて前置きが長くなってしまいましたが今回はそんな“町と藝能文化”という部分にスポット当てて、阿佐ヶ谷にある中央線的居酒屋「あるぽらん89」のマスター佐々木さんにお話を伺いました。 小さい居酒屋ながら、音楽のライブ、演劇、落語にコント、無声映画鑑賞会まで催してしまう、藝能を愛するお店なのです。
「あるぽらん89」マスター・佐々木 多くを望まなければ お店の名前が「あるぽらん89」となると、1989年オープンということですかね。 佐々木「そうですね20年目を過ぎたあたりです」 開店のいきさつなど聞かせて下さい。 佐々木「もともとサラリーマンで雑誌関係の仕事をしてまして、30歳ぐらいの時に開店したんですが、まあ一言で言うと飲み屋の親父を1回やってみたかったんですよ」 1回ですか(笑) 佐々木「1回経験するっていうつもりが、20年経っちゃいましたからね。始めは愛想のないお前みたいなのが飲み屋なんて、って言われましたが、向いてない仕事ほど長続きするもんなのかもしれないですね」 どうして飲み屋の親父になりたかったんですか? 佐々木「飲み屋がやりたかったっていうよりは、俗に言う自分の城が欲しかったっていう、それにお酒が好きだっていうのもあってですね。 それで20年続いたっていうのは、何となく続いた20年、それとも試行錯誤して続いた20年? 佐々木「試行錯誤して、何にも努力しなかった20年。忍耐という努力はしましたけどね(笑)」 なぜ阿佐ヶ谷という場所に開店されたんですか? 佐々木「東京に出てきて学生の時から阿佐ヶ谷に住んでいて、この何もやってないんだけど何かやれそうな人がいる、みたいな不思議な魅力と、ゆる〜い町の雰囲気と居心地の良さにハマっちゃったんですね(笑)」 何となくわかりますその感じ(笑) 佐々木「多くを望まなければこの町で十分に楽しめてしまう、それが決して良いことなのか悪いことなのかわかりませんけど。それだけ魅力的だったっていうことでもありますね」 それが70年代後半ですね。それから30年近く経って、この町の雰囲気は変わりましたか? 佐々木「う〜ん、客として店に出入りしていた頃とは立場が逆になって、発信する立場になってしまったから、受ける印象という部分では語れないかな。 私も東京に出てきてから27年になりますが、中央線界隈の雰囲気は良くも悪くも変わったという印象はないんですよね。 佐々木「飲み屋に関して言えば特に小さい店が多い環境ですし、ごちゃごちゃっとした雰囲気は見た感じそんなに変わらない印象でしょうね」 店の入れ替わりとかはあまりない感じですか? 佐々木「この店のあるスターロードっていう商店街に関して言えば、店がオープンしてからほとんど変わらなかったんですけど、ここ4,5年で大きく変わりましたね。ていうのも凄く長くやってこられたマスター達が、商売を全うした、いわゆる引退という形で店を閉めるのが続いたんですよ」 新しく入ってきたお店とかは阿佐ヶ谷とか、こういった雰囲気に憧れて出店されてる感じでしょうか? 佐々木「それは一概には言えませんね。でもこの辺りだとやっぱりチェーン店とかより規模の小さい個人商店の出店が多いです。新しい店でもそれぞれ一癖ありそうな感じしますよ」 世間の景気に左右されるっていうのはありますか。 佐々木「う〜ん、お金があるから行こう、っていう店でもないですし、景気に左右されずに酒代のエンゲル係数は維持したい客層なので(笑)。でも確実に景気の良し悪しは感じますね。一見さんのお客さんが減りますから」
いろんな試行錯誤をしながらやってきて、 お客さんの層というか雰囲気は20年で変わりましたか? 佐々木「長くやってると時代に合った変化はありますね。演劇がブームの頃はそういう関係のお客さんが増えたり、バンドブームの頃はやたらギター持ったお客さんが多かったり。 お客も堅実に当たり外れを警戒して飲み屋を探す時代のようですね。 佐々木「こないだ、この店のコンセプトは何ですか? っていきなり聞いてきた若いお客がいて、そんな難しいこと考えてないって。君は経営コンサルタントでもしてるのかって思いましたよ(笑)」 でもある種そういうったコンセプトとかいうより信念のような物を持ってるような雰囲気もありますねど。町も店も。 佐々木「何か自由に色んな物事が集まる場にしたいな、っていうのはありますけどね。10年前ならもっと熱く店の事も中央線のことも語ってたんですけど(笑)、一周しちゃって、この街との20年のかかわりを問い直しているところかな。さらに今後のステップのためにね」 まあ私達もこういうインタビューさせて頂いて、何かそういった物を聞き出そうとしている魂胆はあるわけで、そんなお客さんを否定できないんですが(笑)。 佐々木「みんないろんな試行錯誤をしながらやってきて、結果的に出来てきた雰囲気だったりするんじゃないですかね。初めからこうしようとかはなかったと思いますけど」 初めっからレトロではないわけですしね。 佐々木「レトロっていうかただ古いだけなんですよね(笑)。 さすがにカワイイっては言われないですよね。 佐々木「言う言う! そう言われてふざけてるのかとも言えないですし、多分悪く言ってるんではないということだけはわかるんで、でしょ、って言って話しを終わらせるようにしてるんですけどね。それ以上掘り下げて会話が出来ない(笑)」 そういうお客さんって、ここを贔屓の店にはするんですかね。 佐々木「お客さんのパターンとして、常連になって着くタイプ、1回だけのタイプ、それからグループで何軒かのお店を定期的に巡回するように回って遊んで、数ヶ月に1度やってくる準常連タイプがいますが、そういうお客さんは後者ですかね。田舎の友達を案内してくるような感じの店になったりしてるみたいです」 観光地ですかここは(笑)。でも店の看板には“中央線的酒場”って書いてありますから、ある種の中央線のフラッグショップ的な酒場なのかもしれませんね。 佐々木「そうですね。もしくは中央線沿いに住んでるって方がほとんどですかね」 イベントを催しても遠方からのお客さんはあまり来ない感じですかね。 佐々木「やる方にもよりますけどね。中には地方、関西や東北あたりからおこしいただける方もいますよ。でもこのスペース、30人、立ち見で詰めて貰って60人ですから、あんまり宣伝して入れなくなっちゃうことにもしたくないんで、基本的に地元の方に色んなものを楽しんでもらいたいっていうのがあるんですよ」
撮影・スズキマサミ
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