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★演者に訊く 2009年12月 【全3回 其の1】
この項を皆さんが読む頃には旧聞に属しているかもしれませんが、先日今年の流行語大賞が発表されました。本年の大賞は「政権交代」だそうです。流行語は時代を写す鏡と言われていますが、近年は無理に選んでいる感が否めないのも事実です。ここはいっそ該当語無し、と言い切る勇気を持ってはいかがか?と思うのですが。さもなければ2〜3年経ってから選ぶとかね。 では今回のゲストのご紹介。
江上リノ(写真右) 酒井相一郎(写真右)
●声優になる 江上「本当はアニメ歌手になりたくて、某養成所のオーディションに行ったんです。そしたら歌手部門と声優部門を同時にやっていて、(他の受験者の歌や演技を)聞いているうちに演じてる方が楽しそうだなと思って変えようと思って……」 オーディションの途中に方向転換出来るものなんですか? 江上「そこは出来たんですね」 いい加減と言ってはいけないかも知れないけれど。 江上「かなり、ですよね(笑)。声優部門の台本が『銀河鉄道999』じゃなかったらそのまま歌手に流れていたと思うんです」 それまで声優に全く興味は無かった? 江上「全くって程ではないんですけど、自分がなれるって意識は無かったですね」
では酒井さんの声優志望動機は? 酒井「無茶苦茶不純な動機なんですけど……」 モテたい、とか。 酒井「なれそうだから。最初はその一点でした。友達にサラリーマンを選ぶ人がいなくて、僕はアニメが好きだったんですけど、絵も描けないし物語も書けないしというのがあって、自分に何が出来るんだろうと思ったら、声優か、みたいな」 どうやら二人とも当初から一直線に声優を目指して生きていたのではないようだ。若い世代にとって声優とは、数ある職業選択肢の一つに数えられる程身近な存在なのかもしれない。 酒井「そういう人もいますね」 江上「私は仕事が声優ですっていうと『あぁやっぱりね〜』って取って付けたように言われるんですけど」 酒井「同じです。『そういえば良い声してるね』と言われます。そういえばって(笑)」 そもそも声優になる為にはどうすれば良いのでしょう? 江上「大体は養成所にオーディションを受けて入りますね」 養成所に入る=習うだけでもオーディションを突破しなければならない。それだけ希望者が多いのである。 酒井「なる場合もまれに。光り輝いているものがあれば、講師の人が上に話をする場合がありますね。でも普通は無いです」 声優養成所って都内で幾つくらいあるんですか? 江上「凄っいありますよね。大きいのがパッと思い浮かぶだけで5つありますよね」 総数は誰も把握していないのが実情らしい。ウィキペディアで声優養成所を調べると代表的な養成所として列記されているだけで37箇所。ヤフーで同語を検索すると130万件ヒットした。それだけ情報を発信している場所と、情報を求めている人がいるということ。
江上「養成所の先生が舞台の人だったんですよ。稽古も舞台の稽古みたいで、今度は舞台にも魅せられて声優のお仕事もしつつ劇団の養成所に入りなおしたりしました」 声優をしつつ舞台もやるというパターンは少なくない。 酒井「声優さんて結構あると思うんですけど、アニメが好きで入ったけど、いざやってみると芝居が好きだっていう風に変わっていくっていうパターン。僕もそれでしたね。それで弥永和子さんていう、僕の師匠みたいな方が劇団を作っていたので、そこに入りました」 ほらこちらも。 江上「200ステージ位は。100公演はやった作品があるんですね。全国廻ったんで」 酒井「それに比べると全然。5〜6作品くらいです」 現在はお二人とも声優に専念されているそう。 江上「もうそろそろ潮時かな、と思って(笑)。それで今度は本格的に声優でお仕事したくなって、今の事務所を紹介して頂いたんです」 舞台と声優、どちらも演技をする事には変わりは無い。実際にやってみると違うものだろうか? 江上「舞台は一つのものを物凄い長い時間かけて作ってゆく。その代わり、あれだけ長い時間稽古すればある程度体にしみつく、みたいな部分もありますね。声優は短時間で終わるんですけど、一人の責任が大きいんですよ」 酒井「全然違うと僕も感じましたね。江上さんが仰ってた通りなんですけど……」 酒井氏、まだ緊張が解けないらしい。 酒井「よく言われたのは、舞台芝居だねってゲームの収録で言われたり。ワンルームの設定で、客席に届ける距離感で演技しちゃったり。(声優の演技としては)遠近感がないっていうか」 余談だが弁士と声優の演技は全く違う。声の使い方、演じ分けの技術、感情の乗せ方に至るまで全然違う。私も苦労しているのである。 酒井「舞台と声優っていう括りじゃなくて、ゲームとCDドラマ、アニメと洋画は声優として演じる共通点はあるけれど、全部タイプが違うんだというのを実感してます」
歌舞伎と新劇の演技が根本的に違う方法論で形成されているが如く、声優の演技はそれぞれの分野で求められるものが大きく違う。プロとして活動して初めて気付く事は多い。 江上「最初は可愛い声出してやれば良いのかなと思ってたんですけど、いざ養成所に行ってみると発声法やら滑舌やらあるじゃないですか。芝居をやると言うのはそういう事か、って」 酒井「僕はもっとアーティスティックな世界かと思ってたんです。雑誌とかにも出てるし、アイドル的な部分があるのかなと思ってたら、何ていうか、サービス業(笑)」 思ったよりも地味だったという事? 酒井「(藝能の世界って)サラリーマンになれないからやってる、っていうのあるじゃないですか。でも本当は気が利くというか、日常的な事が基礎になっていて、一般社会よりもそういう所を重んじる世界なんだと思いました」 声優はアウトロー集団ではなかった。 酒井「そうです!いや、アウトローとは思ってなかったですけど」
●声優って食えるんですか? 声優になりたい人は実際多い。落語家になりたい人数とは比較にならないくらい多い。弁士になりたい人数とは比べてはいけない。 江上・酒井(二人同時、首を横に振る) 全体として、声優が必要とされれる作品数って増えてるんでしょうか。深夜帯では毎日のようにアニメをやってますが。 酒井「アニメ自体は全盛期の3分の1らしいです。凄く厳しい現状ですね」 江上「ゲームもここ2〜3年で落ちてるみたいで、それに比べると声優は増えてきて」 不景気はかなり深刻のようだ。オマケに俳優、お笑いタレント、アイドル、果てには弁士までが声優をやるのだから、声優の皆さんたまったもんではない。 江上「やはり、売れないと」 売れる、とは? 江上「友達で凄い売れてる人がいるんですけど、その人のスケジュールを見ると、毎日必ず一つは仕事が入ってるんです。そこ位にならないと売れてるって言えないじゃないですかね」 かなりハードですよね。 江上「げっそりしてますね」 声優だけで生活できてるのは全体の何%なんでしょうか? 酒井「3%くらい。テレビアニメでレギュラー2本あったら飯だけ食えるって話です。2本取る=他の仕事が入ってくるから、それでバイトしなくて良いって聞いた事があります」 レギュラーというのは毎週必ず出てるような役を指すんですよね? 江上「アナゴさんじゃ駄目(笑)」 せめてタラちゃんでないと駄目らしい。 江上「それ以上に劇団は食べられませんけどね」 キャリアの長い声優さんが、後進を育てるためにギャラの交渉を熱心にしているというのは聞いた事がありますが、声優というのもかなり大変なお仕事のようです。 ところで、最近秋葉原に声優志望の女の子達がウェイトレスをしているメイド喫茶が出来ました。つまりそのお店ではプロであってはいけないのです。
撮影・スズキマサミ
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